
オレオレ詐欺の被害額は、雑損控除の対象にならない
こんにちは。名古屋の税理士 南雲和江です。
今回は、所得税法の「雑損控除」という規定について、お話したいと思います。
オレオレ詐欺に合い、まんまと 「お金を騙し取られた。」 なんてことが起きてしまったら、雑損控除の適用を受けることができるでしょうか。
この「雑損控除」という規定は、資産の損害を受けた場合、一定の算式から計算した金額を所得から差し引いてくれるという なんとも 国民にやさしい規定です。
※所得というのを簡単に言うと、「収入-経費」 です。
雑損控除の話の前に所得税の算出方法を簡単に説明しましょう。
まず、所得というのは、何種類にも分かれています。(利子、配当、不動産、事業、給与、退職、山林、譲渡、一時、雑)
この何種類にも分かれている所得を合計額したものを合計所得金額といいます。
この合計所得金額から 各種所得控除額の合計額を差し引いた残りの金額に税率を掛けて仮の所得税を算出し、さらに税額控除を差し引くと所得税が算出されます。
計算式で表すと、こんな感じです。
(合計所得金額-所得控除額)×税率-税額控除額=所得税
この雑損控除という規定は、所得控除額グループに属します。
さて、本題の雑損控除の話に戻ります。
雑損控除の対象となる「資産の損害」とは、
(1) 震災、風水害、冷害、雪害、落雷など自然現象の異変による災害
(2) 火災、火薬類の爆発など人為による異常な災害
(3) 害虫などの生物による異常な災害
(4) 盗難
(5) 横領
による損害に限るとされています。
では、
もし、オレオレ詐欺に合い、まんまと 「お金を騙し取られた。」 なんてことが起きてしまったら、雑損控除の適用を受けることができるでしょうか。
市民感覚からすれば、こんなとき、所得税の雑損控除で所得から差し引いてもらって、税金を安くしてほしいものですよね。
大変残念なことですが、上記の(1)~(5)に 「詐欺による被害」というの規定がないので、オレオレ詐欺による被害額は、雑損控除の対象にはならないのです。
参考採決:(平成23年5月23日裁決)
このほか、恐喝により お金を渡した場合も雑損控除の適用は受けられないので注意が必要です。
参考採決:(平17.7.1裁決、裁決事例集No.70 144頁)
このように、雑損控除の規定が適用がないのは、騙されたり、脅かされたりして金品を取られた場合には、騙されたり、脅かされたりする側にも 相応の落ち度があると考えられるからなのでしょう。